【 フェルトスタジオ icchi's room】 世界樹

ハンドメイドで生計を立てて「スローライフ」を実現しているフェルト作家の日常ブログです。

③その時、自衛官だった俺は…3.11東日本大震災…災害派遣の記録③

前回の続きです。

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フェリーの中の事は、正直あまり記憶にない。

到着後、活動出来る様にほとんど寝ていたからだと思う。

 

秋田港に到着、まだ空は真っ暗だった。

全車両をフェリーから降ろし、出発した。

 

行先は「岩手県 宮古市」

 

フェリーターミナルから少し走り、高速道路に侵入した。

高速道路はすでに「閉鎖」されている。

災害派遣・緊急車両のみが通行可能だ。

 

俺は当初、「小隊陸曹」と言う立場で派遣に出たので高機動車の車長席(助手席)に座っていた。

秋田で高速道路に乗って間もなく「照明」が無くなった。

辺りは真っ暗だ…。

「停電」しているのだ!

 

暗闇の高速道路

走っている車両は我々だけ

異様な感じだ…。

 

ドライバーを交代させながら災害派遣現場に向かう。

移動中もラジオのニュースで現場の状況を把握する。

 

その時のラジオから聞こえたヘリからの中継を覚えている。

「今、〇〇上空にいます(※場所は覚えていない)、現在ヘリから確認しています!ヘリから見えるのは200…いや300は確認できるでしょうか??無数の遺体が確認できます!!!」

 

この様な内容の中継だった…

ヘリから確認できるだけで200~300の遺体!?

どんな事になっているんだ…

 

後部には若い隊員が6名ほど乗っている。

いつもより口数が多い。

経験の少ない若い隊員達は「平静」を装うのに必死だ。

 

「怖い」のだろう。

 

それで良い。

「怖い」という感覚を持って任務にあたるべきだ。

 

やがて日が昇り、辺りが視認できる様になったが、高速道路からは状況が分からない。

 

いよいよ目的地「岩手県 宮古市」に入った…。

 

 

壊滅していた市内

高速道路を降りて更に進む。

辺りには「倒壊家屋」が数多く散見される…。

 

道など無くなっている。

カーナビを搭載していたが意味がない。

 

我々が現地入りしたのは、既に13日

主要な国道のみ、道が既に開けてある。

開けてあると言っても、とりあえずドーザーで瓦礫を押しのけているだけだが…

それでもこの短期間で道を開けたのは凄い!

 

倒壊家屋を見ながらさらに進む。

「酷いな…」

そうつぶやいた時、道路の上り坂が終わり、広い景色が目の前に広がる。

 

高速道路?高架橋の真下…街のど真ん中にどデカい船がひっくり返っている!!!!

…そして街はグチャグチャだ…

 

本当に言葉を失った。

「言葉を失う」とは、まさにこの事だと思った。

 

テレビで見ていた「壊滅した町」が目の前にある…

海からこんなに離れているのに…

 

正直…この惨状の中で「生きている人は居ない…」そう思った…。

同じ様な被害がどれだけの地域で起きているのか…。

 

 

我々の部隊(連隊)は、まずは「救助体勢」を立てる為に、活動拠点となる「老木公園」に向かう予定だった。

グチャグチャの市内を走っているのだが、道は塞がれ、ナビは役に立たない。

進んでいくと瓦礫で塞がれている…

Uターンをして別の経路を探す

 

そんな時、中隊の車両隊列は崩れた。

中隊長車や小隊長の車両とはぐれたのだ。

…と言うか中隊長車が道を間違え、数台がそれについていったのだ。

 

残ったのは俺の車両の他、後続車が4両

その時、先頭車両になっていた俺は一時停車し後続車を止めた。

各「車長」に集合してもらい、ボンネットの上で地図を広げた。

無線は繋がらないし、当然、携帯電話も使用できる状況ではない。

 

他小隊の若手の「小隊長」もいるが、経験値は圧倒的に俺が上だった。

このまま「目的地」へ前進しようか、と話した時だった。

 

ウウ~ウウ~

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けたたましく「サイレン」が響いた!!

「津波警報」だ!

 

皆の顔に緊張が走る…

 

「きゃー!」

直ぐ近くに、サイレンに怯えしゃがみこんだ女子中学生が3人視界に入った。

 

俺は「レンジャー隊員」である為、これまでの訓練や災害派遣でも「救助任務」の経験が他の隊員よりも圧倒的に多い。

そんな「経験」が瞬時に活きる。

 

俺はグルっと周囲を見渡した。

「高台」がある!

道も生きている!

 

俺は少し大きめの声で言った。

「近くの住人を、全てあの高台に運ぼう!」

 

一人がこう返す

「許可なしで民間人乗せて大丈夫ですか?」

 

俺は少し声を荒げた。

「関係ない。責任なんか全部取ってやる。急いで運ぶぞ!!」

先輩方もいたが、俺の意見に同調してくれた。

 

直ぐに俺の車両に、女子中学生3人を乗せ、近くにいた住人も乗せて「高台」に運んだ。

「高台」に上がると港が見えた。

 

各車両から数名降りた隊員達が「民間人の誘導」をしている。

車両は再び町に下りて民間人を車に乗せ避難させてる。

この連携は迅速だった。

ほとんど指示を出していないが、皆「今、自分が何をすべきか」を理解していた。

 

「サイレン」は鳴り響いている。

港から「高台」に道路が伸びていて、津波が来た位置が明確に分かる。

その道を車や徒歩の住人が避難してくる。

 

高台はあっという間に避難してきた車と人であふれている。

俺は近くにいた若い隊員に、小声で各隊員に伝える様、言伝を頼んだ。

 

「自衛官は民間人より1cmでも低い位置に立て」

たった1cm

でもこれは大事な事だ。

俺達は「国民」を守る義務がある。

 

 

「高台」はざわついている。

当たり前だ…。

あの大津波に町を破壊されたばかりなのだから…。

 

まだ、遅れて坂道を登ってくる老人が数名いる。

高機動車は避難者の車に挟まれ、もう動かせる状態ではない。

 

俺は避難指示を出しながら「海」を見ていた。

港には沖に大きめの船がアンカーを降ろして停泊していた。

避難させている中、その船がゆっくりと方向を変えている。

5分ほどで180℃方向が変わっていた…。

 

波が引いているのだ!

 

山育ちのド素人の俺でも理解できる。

避難していた住人の漁師らしき男の人が話していた。

「船の向き変わったぞ!津波がくるぞ!」

 

 

そんな状況の中、逃げ遅れている人を誘導しなければいけない。

誘導に出す位置は「津波が到達している位置」…

…何人必要だ?

…最低でも3名

 

俺は振り返って近くにいた隊員数名の眼を見た。

『何を求められているか?』

この状況を把握している奴等が俺の近くに数名立っていた。

 

俺はまだ何も言っていない。

 

一人が口を開いた。

「行きますよ。」

 

俺が普段から「信頼」している同じ小隊の後輩レンジャー隊員だ。

 

もう一人も続ける。

「あそこの交差点まで降りないと駄目ですね。急ぎましょう。」

 

コイツは別の小隊でレンジャー隊員ではないが、とても信頼できる後輩だ。

 

俺を含めて3名

コイツ等なら…行ける。

 

しかし、俺はこの時「躊躇」していた…

俺の「行け!」と言う一言に「命」が掛かっている。

 

これまでも訓練だけでなく、災害派遣などの実任務でも「命令」により隊員を動かした事など数えきれないほどある。

でもここまで隊員の「命」を意識した事はない…。

 

もちろんコイツ等は「自衛官としての覚悟」は出来ている奴等だ。

だから「行け!」と命令すれば、間違いなく危険を顧みず「任務」を遂行するだろう。

 

俺が一瞬「躊躇」した理由は…

実はこの2人の隊員には小さな子供がいたからだ。

0歳の子、1歳の子…

残された「家族」の事を考えた。

 

おそらく、時間にして5秒ほどだったと思う。

これ程、短時間に「命」の重さについて真剣に頭をフル回転させたことなどない。

 

指揮官の職責の重さを少しだけだが、十分すぎるほど体験した。

 

 

俺の口が開く

「行くぞ!!」

 

危険な時こそ普段から「信頼」出来る者を頼りにする。

コイツ等なら「自らの身の安全を確保」しながら任務を遂行できるだろう。

 

俺達3人は道路を下まで駆け下りた。

 

お年寄りの誘導を始めた時、何かを放送しながらパトカーが道路を進んできた。

 

??

 

マイクで放送しているのは婦人警察官

何を言っているか分からなかったのは、「冷静」ではなく叫ぶ様にマイク放送しているからだ。

 

「多只、福島第1原発第3建屋が爆発しました!建物から出ないでください!窓を閉めて下さい!」

 

おいおい

バカ言うんじゃねェ。

 

今、津波警報なっているんだぞ…。

 

 

次回へ続く。

 

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